わたしが完全にアルバイトを辞めたのは、漫画家になってから。出版社に作品を持ち込んだら、運良く、掲載していただけることになりました。でも、「毎月描けるわけでもないし、次にオファーが来る保障もないし…」と思っていたんだけど、デビューしてすぐ毎月描けるようになって、「あら、これで暮らせるじゃない?」ということになって。
思い返してみると、バイトをしていた時のお客様や、同じようにそこで働いていた人たちなど、本当にみなさんよくしてくださったと思います。
そのときって、まったくお金がない時代だったから、よくしてくださっても、なかなかお返しできないじゃないですか。でも、わたしは、絵が描けたり、お料理ができたり、っていうところを駆使して、お礼をしました。
「幸せを呼ぶ北欧のこびと”ノーム”よ」って絵を描いて、額縁に入れてプレゼントしたり、誕生日にはケーキを焼いて持っていったり
そういうふうにしていたら、どんどんつながりが深くなっていって、いまだに家族ぐるみでお付き合いしている方もいるぐらいよ。お金もなくて、何も持っていなくて、ただ「タレントになりたいわ」って夢見ている子をかわいがってよくしてくれた人、っていうのは、今でもいちばんの宝物なのね。 |