スターアルバイト烈伝
肥後克広
肥後克広(ダチョウ倶楽部)
PROFILE

1963年生まれ。沖縄県出身。肥後克広、寺門ジモン、上島竜兵の3人でダチョウ倶楽部として活動。「一番背が高いから」という理由で肥後がリーダーを務める。 「つかみはOK!」「聞いてないよ~」などのギャグで一世を風靡し、最近では携帯電話のお待たせコールとして「あ、電話だ。竜ちゃん電話出てよ!(肥後)俺やだよ!(上島)俺もやだよ!(寺門) しょうがいないなあ。じゃあ俺が出るよ。(肥後)じゃあ俺が出るよ。(寺門)いや俺が出るよ(上島) どうぞ! どうぞ! どうぞ!」が人気を博している。
肥後自身は、立川談志・森本レオ・定岡正二・テリ-伊藤・久米宏などのものまねを得意とし、特に森本レオには定評がある。

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肥後克広
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バックナンバー
肥後克広(ダチョウ倶楽部) Katsuhiro Higoあの有名人のアルバイトにまつわるさまざまな話をお送りするこのコーナー。 毎回、下積み時代の隠れた努力や、おもしろいエピソードをお届けします。
アルバイトで高校の学費も稼ぎ出す

肥後克広高校の頃からアルバイトはいろいろやりました。実は高校の学費も自分で払ってたんですよ。学費のことだけでなく、バイクや8ミリの映写機が欲しくて、すごいがんばってアルバイトをしてましたね。朝起きて学校へ行って、終わったらアルバイト。夜遅くまで働いて、帰ってすぐ寝ちゃう…。という生活でしたから。

バイト漬けの日々でがんばれた理由は、バイト先が楽しいところばかりだった、というのが大きかったですね。

「料亭のお運びさん」みたいな仕事をしていたときは、バイト仲間がみんな同級生だったりして。同級生が10人くらいいたかなぁ…もう、ほとんど部活のノリです。学校終わってみんなでワイワイ部活動して、しかもお金がもらえちゃう!みたいな(笑)。

そこは日払いで5,000円くらいくれたんですよ。それを毎日タンス貯金してました。さっき話したみたいに、使う時間もないくらいバイト漬けだったので、結構貯金できました。
沖縄時代の忘れられないアルバイト先「大本営」

肥後克広僕、沖縄時代にものすごい所でバイトしてたことがあるんですよ。「軍歌酒場 大本営」っていう名前の店だったんですけど、そこでウエーターをやっていたんです。水兵さんの格好して(笑)。

今で言う“コスプレ”なんですけどね、そこの従業員はみんな兵隊さんの格好をしてるんです。ビールのことを「魚雷」って呼んだり、ウイスキーのオールドを「爆弾」って呼んでたり。そのお店の面接に行った時、「じゃ、キミは背が高いから海軍ね」なんて言われて。

まず最初は、お客さんに対する敬礼の仕方を習いました。知ってます? 陸軍と海軍は敬礼のやり方が違うんですよ。海軍は甲板の上の狭い場所で敬礼するから、ひじを下に向けたままコンパクトに敬礼するんです。陸軍はひじを横に出すんですけどね。

お店に来るお客さん…そこでは「上官」って言うんですけどね(笑)、その上官たちはやっぱり年のいってる人が多かったです。上官が入店してくると、直立不動で「いらっしゃいませ!」と敬礼、上官も敬礼を返してくれるんですけど、僕らは上官が敬礼を下ろすまで敬礼してなきゃいけないんです。だからマニアな人とは1分くらい敬礼して向かい合ってたりしました。そのうち「うむっ!」って上官が満足そうに敬礼を下げてくれる。そうすると僕も敬礼を下げられるんです。

慣れてきたら僕も楽しくなってきて、ポケットに小銭を忍ばせておくようにしたんです。そうすると敬礼した瞬間に“ジャッ”っていう硬い音がして、「決まった~!」みたいな気分になれるんです(笑)。ホントに楽しんでできたバイトですね。

その頃の体験があるんで、僕、軍歌を歌えるんですよ。上官たちが戦友と肩組んで歌っていたりしてましたから。あと、大きな音でする手拍子! 上官が一生懸命歌っているワケですから、手加減なんてできないじゃないですか。だから手の叩き過ぎで手相の線がひび割れて、血がにじんできたりしました(笑)。いやぁ、一生懸命でしたよ。

あと、戦時中をモチーフにしたお店だったせいか、怪奇現象のようなこともよくありました。誰もいないのに「すいません」っていう声がはっきり聞こえたり、いるはずのない場所を人が横切ったり。みんなで並んで写真を撮影したら、後ろに1人多く写ってたりもしました。僕はあんまり怖いとは思わなかったですよね。ま、これだけ兵隊さんの格好したり、戦争中の装備とか集めてあれば、「そりゃ出るわな」って(笑)。

ここの酒場は1年近くやってたかなぁ。カラオケのDJとかも任されるようになったんですよ。DJといっても、カラオケのレコードを取り替えたりするだけなんですけど。でも、曲の間奏に盛り上げるためのセリフを挟み込んでみたりして。それがスパッって決まると気持ちよかったなぁ(笑)。

牛乳スタンドアルバイトでの名人芸

肥後克広東京へ出て来てからは、池袋や高田馬場の駅構内にある牛乳スタンドでバイトをしてました。その頃にはもう芸人を目指していたので、ネタ合わせの時間を大事にしたかったんです。だから午前中勤務だけでよかった牛乳スタンドを選んだんです。このバイトは結構長い期間やっていたんで、僕、牛乳のビンのふたを取るのものすごく速いんですよ(笑)。

常連のお客さんになると、牛乳のことを「白」って言うんです。それで100円玉をポンとカウンターに置くの。その瞬間、僕は左手で冷蔵庫から牛乳を取り出して、右手のキリでふたを外す。と、同時に左手でカウンターに牛乳を差し出しつつ、右手でおつりの20円を出す……。この一連の動作が1、2秒くらいでしたから(笑)。あ、でも、この間、テレビの企画でその技を披露したんですけど、だいぶ遅くなってたなぁ。当時はホントに一瞬でできたんですけどね。

ラッシュのピークの時間帯だと、1分当たり50人くらいのお客さんが来てましたから。たまにお釣りを忘れていく人とかもいて、そんなときは一瞬で20円をカウンターの隅の方へ…(笑)。

池袋だと土日は遊園地へ向かうお客さんも多くて、牛乳スタンドでも臨時的にポップコーンを売ってたんです。で、店長が「食べてもいいよ」って言うもんだから、僕も作りながらパクパクと。店長も「お前、好きだな~(笑)」みたいな感じで。でも、あれって癖になるんですよね。なんか、最初は2、3粒づつパクパクだったのが、だんだん手づかみでグワーっと。そしたら店長に「いい加減にしろ!」って怒られました(笑)。
お化け屋敷のアルバイトは、暗黒舞踏で!?

肥後克広先輩芸人の紹介で、郊外の遊園地でお化け屋敷のお化けのバイトもしたことがあるんですよ。初日に「お化け」としての仕事内容を教わるんですけど、それを教えてくれたのは入れ替わりになる前任のお化け役の人…パントマイムか何かの芸人さんだったと思うんですけどね。「ちょっとやってみて」っていうから「わー!」とか「おー!」とか脅かす真似をしてみたら「全然ダメ!」って言われて。

「僕らプロのアーティストなんだからさぁ、学生のノリじゃダメだよ。僕が見本を見せるから僕の通りやってね」。

そう言って、その人が突然、踊りだしちゃったのが…なんだろ山海塾? あの白塗りの暗黒舞踏みたいな感じの踊りを始めちゃったの(笑)。困っちゃってさ。とりあえずその人の前でだけ山海塾みたいな感じにしといて、その人がいなくなったら「わー!」とか「おー!」とかやってたんですけどね。

お化け屋敷では、お化けの人形が並んでいるところに、僕も人形のフリをして座ってるんですけど、だんだん飽きてくるんですよ。本当はお客さんが近くに寄ってきたところでグワー! みたいに動かなきゃいけないんだけど。ある時、あまりにも退屈で貧乏ゆすりしてたんです。足を小刻みに動かしてたの。そしたら、ここまで来るのによっぽど怖かったんでしょうね、「見て!あの人形、電気で動いてる!」って(笑)。あまりにも真面目な声で言うもんだから、それ聞いて吹き出しちゃった。そしたら「うわー!」って驚いてましたけど。

あと、ヤンキーが来たときも笑ったな。僕がお化けとして待機してる部屋の前で「怖くねーよ、怖くねーべさ!」みたいな声がするんですよ。でも、声が微妙に震えてるの。だからそこらにあった小石を、そいつの歩いている窓に向かってポーンって。そしたら「うあぁぁぁぁ」って絶叫してた(笑)。

大ピンチ!先輩に言われた言葉が聞き取れない!

自由が丘にあったカウンターバーでバイトしてたこともあったんですよ。結構カッコいいボーイさんがいる店で、彼らを目当てに女の子が集まるような感じの。そこで、ホールのウエーターをやっていたんです。

あるとき、接客をしてる先輩ボーイが僕を呼ぶんです。「はい!」って返事して近くに行ったら「#$%&@#&$よろしく!」って。何言ってるんだかさっぱり分かんないの。でも、先輩は酔っ払ってるし、聞き返すとキレそうなんで「はい!分かりました!」みたいに答えて、特に何もせずに時間をつぶしていたんです。そのうち忘れるだろうと思って(笑)。

そしたらまた「おい!」みたいに呼ばれちゃって。でも、やっぱり「%%&%&@%$%よろしく!」で、何言ってんだかさっぱり…。しょうがないから「はい!分かりました!」って言って、またシカトですよ(笑)。

さすがに3回目に先輩がキレましたね(笑)。「あのなー、お前よー、&&$%#@%@$#よろしくって言ったろーが!!」って。それでもやっぱり分かんなくて、フロアの真ん中で胸ぐら掴まれちゃったんですけど。店長が慌てて出てきて「どうした? どうした?」って。店長が聞いたら、どうも「アイスよろしく!」って言っていたらしいんですけどね(笑)。

でも、その後、なぜかその先輩には気に入られちゃって、「あのよー、肥後ぉー、俺さぁ、スターになりたいんだけど、どう思う?」って真顔で聞かれたりしたんですよね。「どう?」って聞かれてもねー(笑)。あと、営業中に「肥後ぉー、ちょっとよぉ、頼みがあんだけどぉ」って言われて「なんですか?」って聞いたら「コースターの裏に『愛してる』って書いてくれよぉ」とか(笑)。漢字が分かんなかったんでしょうね。

それこそコントのネタになりそうな人たちに出会えたのが、アルバイトの一番の楽しさでしたよね。世の中にはいろんな人がいるんだなぁって(笑)。ま、僕のバイト先が変なところばっかりだったからなのかもしれないですけど(笑)。

バイトル情報局